オーストラリア・スウィンバーン工科大学発のスタートアップ企業のエントロマット(EntroMat)が、HEM(High Entropy Material, ハイエントロピー材料)パウダーの供給を開始する。オーストラリア企業としては初のケースで、主にオーストラリアやアメリカの航空宇宙や防衛セクターの3Dプリンターユーザーに向けて供給される。
エントロマットのグレッグ・リンゼイCEOは、「エントロマットはスウィンバーン工科大学でオーストラリアの地場技術を活用する目的で設立されました。従来の素材にはない新しい素材を開発し、新たな市場と可能性を開拓することを事業目的にしています」と説明している。
ハイエントロピー材料は、5種類以上の元素をほぼ等しい割合で混ぜ合わせることで、従来の材料にはない優れた強度、耐久性、耐熱性などを持つ新しい材料。元素が結晶格子内でランダムに配置されるため、エントロピー(乱雑さ)が高くなることが特徴。この特性により、安定した固溶体が形成され、多様な物性が発現するとされている。
単一金属と比較したコストの問題や、溶融温度や組成比の最適解を探るという課題もあるものの、触媒や生体適合材料として利用でき、高価な貴金属や資源量の少ないレアメタルを代替する可能性があることから、注目を集めている。
スウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)は、オーストラリアのビクトリア州メルボルンにある公立大学。メインキャンパスはメルボルン郊外のホーソンにある。

