英国のバイオテクノロジー企業Multus社はこのほど、培養食肉産業用として手頃な価格で無血清成長培地を開発できる、世界初の商業規模の生産工場を公開した。施設の正確な場所はまだ明らかにされていない。
この拡張は、同社が成長培地を大規模生産するべく、1月にEICアクセラレーターを通じてイノベートUKから受けた215万ポンドの交付金を含む計790万ポンドの資金調達に成功したことで可能となった。 初期段階ではMultus社は160万ポンドを調達しており、食品業界で大規模に使用される成長培地「プロリフェラムM」を発売する運びとなった。その後、同製品の原料はISO22000認証を取得し、食品安全基準に従った生産が保証された。
細胞増殖に不可欠な成分であるウシ胎児血清を含まない増殖培地を開発することは、物議をかもす話題であると共に、複雑で高価で時間のかかる試みとされており、業界全体の進化の妨げとなっていた。 そのため、この新しい施設は培養食肉業界にとってのゲーム・チェンジャーとしても作用する。
Multus社はソーシャルメディアで「食肉培養企業は今後、無血清成長培地の生産を外注できるようになり、製品の市場参入を加速させると同時に、発明と製品開発にリソースを振り向けることが可能になる」と説明した。また、同社は「成長培地を自社開発する企業でさえスケールメリットを得られ、安定かつ信頼可能な成長培地の供給元を確保できるようになる」とも付け加えた。
Maltus社のCOO・レカ・トロン氏は昨年、同社が投資ラウンドの成功を発表した際に「当社の製品は、食肉、魚介類、乳製品、皮革など、本物の動物製品を、動物の代わりに細胞を用いて成長させるための手頃なソリューションを提供します。現在市場に出回っている代替品は、食品産業向けはおろか、大規模生産向けにも設計されていません」とコメントしている。