独自の超高解像度マイクロ3Dプリンティング技術を搭載した3Dプリントシステムを開発・販売するBMF(Boston Micro Fabrication、ボストン・マイクロ・ファブリケーション) は、最新のケーススタディとして「3Dバイオニック表面での液体方向ステアリングの世界初の発見」という事例を公開した。
これまで、液体の自発的な移動方向は、液体自体の固有の性質よりも表面の構造的特性や化学組成に依存すると一般的に考えられていたが、香港城市大学の王鉆開教授(City University of Hong Kong, Zuankai Wang)とその共同研究者は、ナンヨウスギの葉に触発され、3Dキャピラリーラチェット表面(ALIS)を製作して、表面張力の異なる液体が表面構造での移動方向を操作できることを初めて発見。2世紀以上続いている課題を解決した。この発見は「3D capillary ratchet-induced liquid directional steering」というタイトルで科学雑誌Science誌に掲載された。
この研究では、設計した3D表面構造にいくつかの課題があるとされていた。
➤ぞれぞれのキャピラリーラチェットは横方向と縦方向両方の曲率を備えた三次元複雑構造を含む。
➤ラチェットの厚さは僅か80μm。
➤ラチェットの先端間の間隔(750μm)を正確に制御する。
➤従来の射出成形、フォトリソグラフィー、CNC加工などの従来の製造方法では製作が難しい。
この課題を解決するために、研究者は10μmの光学解像度を持つBMF社のmicroArch®S140 3Dプリンターを使用して、ナンヨウスギの葉の構造的特徴を利用して、横方向と縦方向の両方に二重曲率を持つ3D毛細血管ラチェット構造を平行に配置して設計・製作した。ブレードピッチp=750μm、コラムピッチw=1000μm、傾斜角度=15〜90°、曲率半径R1とR2は縦方向と横方向でそれぞれ〜400μmと〜650μm。
研究結果によれば、表面張力の低い流体はバイオニック構造のラチェットの先端方向に、表面張力の高い流体はその逆方向に移動することを示している。このような流体の輸送特性は、ナンヨウスギの葉の表面での動きと同じで、しかも、長距離や円形の表面でも、良好な一方向性を保たれることがわかった。